『鉄道員』の鉄シーン(その2=国鉄編) [映画・音楽]
前回に続くイタリア映画『鉄道員』の鉄シーン、
今回はイタリア国鉄(FS)の機関車や線路の画面キャプチャーをご覧いただきます。
(1)
『鉄道員』にふさわしく、タイトルロールのあとは、いきなり線路の主観(=カメラの見た目)でワクワクさせます。
(2・3)
ダブルスリップの盛大な使いっぷりはいかにもヨーロッパですねえ。しかしセコイ日本鉄から見るとやっぱり無駄なんでは?と思ってしまう。
この装甲車みたいなELはE428という形式で戦前の急客機です、リベットだらけの茶色のボディはなかなかアクの強いデザインですね。友人が持っていたリバロッシのHO(※)はめちゃくちゃかっこよかったですが。
(4)
この日はクリスマス。息子の待つホームに滑り込んでくる機関車の移動撮影も痺れますね~監督が鉄かどうかは知りませんが、撮影はなかなか憎い=ツボを心得ている気がします。
(5・6)
(※)
物語は特急機関士のアンドレアが、家庭内のごたごたに加えて仕事でもトラブル(※)を抱えてしまい、様々な紆余曲折の挙句、1年後のクリスマスに、家族や仲間との和解を果たすが・・・というあらすじです。
例によって鉄ブログですからストーリーの記述はここまで、興味が湧いた向きはDVDでご覧ください。
次のシーンは鉄的には見逃せないです。疾走するELの上に張られた架線にご注目!2本あるのは3相交流電化区間だからです。(7)
イタリアには北部を中心に、初期の電化方式だった3相交流がかなり遅くまで残っていました。まるでトロリーバスか路面電車のような2本カテナリーの張られた線路は、いまや貴重なカットなのかも?
Cedarが海外の鉄道に興味を持ち始めた中坊の頃には、TVでこの時代のイタリア映画がよく放映されていて、その中でも2本架線の下を走るELが出てきて、『アレはどうして?』と父に聞いて『3相交流』を知り、謎が解けた次第でした。
以下のシーンは物語のクライマックスといえる場面です。
伏線として、疾走する機関車E428の足回りや前頭部などを、メカニックに捉えたインサートカットが入り・・・そして事件が。
(10~12)
(E428の軸配置は2BB2、最高速度130kmの性能だったそうです。)
ま、何が起こったか(※)は、以下画像を順に並べればなんとなくお分かりですよね。
(13~19)
(※)一応説明しますと、少し疲れて運転中の2人~(ワインを飲んだり煙草を吸ったり、果ては助士は居眠り~映画とは言えホントかよ~と思っちゃうシーンですが)。
そんな時になんとアンドレアが線路上の自殺者を轢いてしまい・・・
(20)
事故処理が終わり、一旦降ろしたパンタを上げて出発したものの・・
更に赤信号見落としで、あわやSLと正面衝突!という間一髪のシーンです。
(21・22)ここでもダブルスリップが使われています。
<特急の走る本線を逆走する列車が有るんか!?>という疑問はともかく、なかなかスリリングな撮影です。
~イタリア国鉄が涙ぐましい協力ぶりですね、今ではこんな撮影は無理だろうなあ。
次のシーンにもSLの登場です。 (23)
主人公は、事故後特急EL乗務から専用線のSL乗務へと降格されてしまう・・。颯爽とした特急とは違う地味な乗務に苛立つアンドレア。
(24・25)工場の専用線のような感じで、汽笛を鳴らしながら併用軌道を行くSLの姿も見ものです。
ここでちょっと本題から脱線転覆(!)します=下のカットの背景に小さく見えてるのは当時の主力だった近郊形電車ですが、緑矢印にご注目・・・(26)
小田急SE車くらいの流線形なのに貫通幌が繋がっているように見えますね。
(27・28)実は繋がってるんです!随分無理してるなあって思いますが・・
・・・ところ変われば幌変わる(?)
世界にはいろんな電車が走ってるものです。
映画に戻ります・・・・・・
(29)
このあとには、鉄道ストライキのシーンなどで深夜のテルミニ駅(↑)や機関車もチラッと出てきますが、映画はアンドレアが仲間と家族に囲まれるクリスマスを取り戻すまでの私生活をメインに展開して行きます。
(30)
鉄シーンに特化した紹介しているので、ストーリーは分りにくいかも知れませんが、庶民の暮らしを細かい描写やエピソードのつなぎで見せていく手法は古い日本映画のようで。家族の絆や、頑固一徹な主人公の性格描写など、イタリア人と日本人には共通するメンタリティがあるように感じさせる映画です。
何よりも国鉄の車両や駅はもちろん、随所に登場する路面電車も鉄にはたまらない。(31)
ダラダラと2回にわたり見ていただいた<『鉄道員』の鉄シーン>のご紹介、この辺でFINE(終)といたします。
ブラヴォー!(パチンコ台ではないですよ)
もう、映画を見たような感動です。
くそまじめで、頑固で、それでいて鉄道員という仕事に誇りを持ち、その仕事が好きで好きでたまらない主人公。そして、息子はそんなお父さんが誇らしく大好きなんですね。
冒頭の、豪快なBGMと共に疾走する特急。膨大なポイントを乗り越えて終着駅に到着。大好きなお父さんを迎えに息子が人波をかき分けてやってきます。乗務を終えたお父さんは息子を見つけ「サンドリーノ!」と声を出すシーンは忘れられません。しかし、中盤以降の重い場面を知ってしまうと、あの冒頭のシーンとのギャップがあまりにも大きいですね。こんなに楽しかった生活が…。
バラバラになってしまった家族と、久しぶりに打ち解けるきざしを見せかけたクリスマスの夜…。
エンディングの奥さんの表情とサンドリーノの姿。何よりもあの音楽がたまりませんね。
久しぶりに感動させていただきました。
もちろん「鉄」の話題ですよ…。
by のり (2013-11-23 07:55)
■のり様
ストーリーを思い出していただきましたか?
親子、夫婦、兄弟、同僚とのきめ細かい交流の描写は日本映画のようなリズム感で、そこにあの音楽と鉄シーンが堪えられません。ラストの無常感は小津映画に通じますね。
by Cedar (2013-11-23 17:15)
★あるまーき様
★hanamura様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2013-11-23 17:16)
流線型を幌でつなぐ?キハ85ですがな。
もう何回も見てますがあるときは国労のイベントで上映。
◯◯◯◯(公開されて半世紀以上たった映画ですが、ネタバレ防止ということで)をする映画なのにいいのかいなと。
by なにわ (2013-11-23 18:08)
■なにわ様
キハ85は幌座がちゃんとありますよね。
⭕⭕⭕⭕なのに、国労で~面白いです。
by Cedar (2013-11-23 21:27)
この映画、幼稚園か小学校低学年の時に見たので微かな記憶しかありませんが、武骨な電気機関車のイメージは強く焼きついています。
by EF510-230 (2013-11-23 21:45)
■EF510-230様
Cedarも約40年ぶりに観たのですが、冒頭のテルミニ駅の電機機関車以外、鉄シーンの印象がほとんどありませんでした。
★くらいふ様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2013-11-23 23:10)
これ、30年以上前に名画座で見て、その後DVDに落として何回も見た映画でした。こんな見方もあるのですね。
by やまびこ3 (2013-11-24 06:10)
■やまびこ3様
鉄ブログなんで、敢えて重箱の隅を突つくような観方しています。
あとは画像としての魅力にも注目して観ます。
まあ、オタクブログですから。
by Cedar (2013-11-24 12:01)
Cedarさま
出てくる機関車がどれも渋くてゾクゾクします。
一度はリマ社の洋物鉄道模型に手を出しかけた経験もあり、
原さんの博物館の影響も合って、昔のスイス機関車が欲しくなりました。
by 狂電関人 (2013-11-24 15:09)
Cedarさま
追伸です。
やはりこの映画に出てくる機関車の流線型からもEF58の流線型は
正しくヨーロッパの機能美から流れを汲むのだと確認いたしました。
by 狂電関人 (2013-11-24 15:12)
■狂電関人様
EF58はこのイタリアンELとフレンチELの流れを組んだデザインですね。
リマのHOは学生時代手を出しました。
まだどこかにあるかも?
by Cedar (2013-11-24 16:40)
★UZ様
★フジトモ様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2013-11-24 22:43)
★ねじまき鳥様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2013-11-26 17:45)