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映画の中の昭和30年代鉄風景=横須賀 [映画・音楽]

古い日本映画に嵌っているCedarですが、先回の『ラドン』に続いて、今回もいきなり映画の1シーン、雨に煙る線路、ふらふら踏切に近寄っていく男。豚と軍艦R11.jpg(1)家並みを見下ろし、丘の中腹をカーブしてくる複線の線路は1435mmゲージ~遠くには、走ってくる電車のライトも見えます。        

古い日本映画を観るCedar的楽しみのひとつは、<昔鉄風景と昔の町並みを観る>って事なのは拙ブログの読者ならご承知のことですね。

~某大手レンタルチェーンの「シニアDVD1本無料キャンペーン」にまんまと乗せられている、って話もあります・・・(汗)

(2)豚と軍艦R10.jpg             接近してくる電車は1つ目ライトの2枚窓・・〇〇い電車に白い帯~どこの電車かお分かりですよね?

(3・4)このシーンが出てくるのは昭和36年日活映画豚と軍艦」。横須賀のやくざ社会とその周辺にうごめく男女のストーリーが、脂っこい描写で展開します。豚と軍艦タイトルR01.JPG豚と軍艦タイトルR02.JPG                のちにカンヌ映画祭でも高い評価を得た監督今村昌平独自の<重喜劇>スタイル=社会と人間の悲しさ、愚かさをアクの強い喜劇タッチで見せる=を確立したという作品ですが、今回は鉄がらみのシーンを抜粋でご覧に入れます。

冒頭のシーンは、丹波哲郎扮する横須賀のやくざが電車に飛び込んで自殺を図るくだりで、京急700形(後の2代目600形)の品川行き特急が登場します。豚と軍艦R12.jpg(5)           実際には気が弱くって死ぬに死ねない、という情けないシーンです・・・ちなみにこのカットの電車は700ではないようで(多分500形)すが、スタッフが余程の鉄でもない無い限り、映画にはよくあることですね。

豚と軍艦R09.jpg(6)           シールドビーム化、方向幕化されてない原形700の顔つきが見られます。ブレてしまってますが品川行きの行き先板や、富士山形の特急標識も懐かしいデザインですね。

生命保険の沿線看板は撮影用セットです~家族の明るい暮らしを売る生保の看板の下で、一匹狼のアウトローが死に損なう~こういうところが今村流<重喜劇>らしさです。豚と軍艦R08.jpg(7)


このロケ場所ではCedarも撮影した(もちろん被写体は電車です~)ことがあります。映画から10年たった昭和46年京浜安浦(現県立大学)付近での京急を何枚か見てください。

(8)この場所は丹波さんがふらふらしていたのと同じ場所と思われます。映画に出てきた踏切もあった様な記憶がありますが・・・安浦400.jpg         当時のダイヤでは文庫~浦賀間の各停が2連で設定されていました、主に400形が使われていましたが、時折1000形2連の運用もありました。

足元に広がる安浦の町は、当時は漁港の面影を残すとともに、近くにある自衛隊相手の怪しげな店(黄金町のガード下と同業)もあったという・・・そんな場所で、映画の舞台となっていた昭和30年代の横須賀の面影が残っていたエリアでした。

京急といえばカイトク=快速特急の元祖です。当時は品川~久里浜間の運転で、映画に登場した700形改め600形が主に使われていました。そっけないデザインの種別版も懐かしいですね。安浦600.jpg(9) 

(10)この当時は京急にも荷物輸送があり、なんと名車230形がその任に就いていました。大きな窓越しに荷物が見えています。安浦230.jpg


230形はこの映画にもチラッと登場します

米軍相手の売春宿やバーが並ぶ後ろを京急が走り抜ける短いカット、米軍相手の歓楽街ドブ板通り=汐入付近のイメージですが、実際には線路際の別の場所にセットを組んだようです。豚と軍艦R04.JPG             (11・12)懐かしい赤と黄色のデハ230+クハ140+デハ230が、南田洋子さん(ちなみにこの映画の主演は南田さんの夫、長門博之さんです)の後ろの高架線をゆっくりと走り抜けていきます。豚と軍艦R05.JPG              クハ140の姿を拡大してみましたが、ボケボケでよく分かりませんね、スミマセン。

~映画に出てきた編成が、同時代の大師線にいた姿をご覧下さい(昭和38年撮影)。s38大師線03縮小.jpgs38大師線02縮小.jpg(13・14)230+140+230の究極のアンバランス編成は、京急を代表する電車のひとつでしたね。この編成が100km超で急行運転していたのが昭和30年代の京急でした。

映画は横須賀が舞台なので、国鉄横須賀駅も何度か登場します。

(15・16)夜の横須賀駅の70系や、今も変らぬ駅舎の姿。豚と軍艦R07.JPG豚と軍艦ラストR05.JPG               そして駅前に並ぶ京急バス=車体の色が今と同じ~京急は電車もバスも色に関しては伝統を守っているのが嬉しいですね・・ってこんな事、映画と何のカンケイがあるのでしょうか?

(17)映画のラストは、やくざと売春の町に決別した主人公の女性が、横須賀線で町を出ていくシーン=横須賀駅の俯瞰で終わります。豚と軍艦ラストR.JPG              そんなシーンでも、鉄はホームに止まっているクモハ43+クハ76?の2連=横須賀⇔久里浜のチョン行に使われていました=についつい目が行ってしまう!

というわけで、映画の話か電車の話か分らなくなってきてしまいました。とりあえず記事もこの辺で「終」と致します。

(愛読させて戴いているnexus6様のブログで、現在の横須賀駅の俯瞰画像を拝見しました。周辺はともかく、駅のホームは変っていないようですね・・)

 


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nexus6

頂戴したイミシンなコメントに、えっ!? 何でしょう と思いつつ、1画目から記事をジックリと拝見して... 
イチバン最後にキタ━(゚∀゚)━!
いつぞやもあったCedar様との今昔写真対比でありましたか! こういう掛け合いみたいなのって楽しいですね。
by nexus6 (2012-10-16 13:55) 

Cedar

■nexus6様
2人のブログを股にかけて、今昔対比の掛け合い~いやはや楽しい、こんな事があるから、ブログはやめられないですね!
横須賀の京急にも久方ぶりに出動したいです。
★アルマーキ様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2012-10-16 14:36) 

Cedar

★あるまーき様
nice!表記間違い失礼しました。
by Cedar (2012-10-16 15:00) 

Cedar

★Reirei様
★フジトモ様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2012-10-16 20:38) 

のり

映画に登場する鉄道のシーン、印象的なものも数多いですね。
「東京物語」では、たしか大坂志郎さん扮する息子さんが鉄道員をしておられたと思います。
この京急電車も、なかなか迫力がありますね。
by のり (2012-10-16 21:26) 

Cedar

■のり様
映画人、特に撮影部には鉄道好きが昔から多かったとか。
そういうプロが撮ったシーンは印象に残ります。
小津映画には必ず印象的に登場します。

★シュウチャン様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2012-10-16 22:37) 

ぱす

現県立大学と汐入のイメージのロケは、電車の走行風景は現場で撮影し、それを撮影所で大スクリーンに映写し、その前で役者が演じたり、街のセットを配して、スクリーンの背景と合わせて、35mmカメラで撮影したのかもしれませんよ。私は映画でなくテレビ世代ですが、京急と言えば、『東京バイパス指令』を近年CSで放送されたものに、手配師が「トルコより稼げる」とコールガールを甘言で集め、夜間に黒猫的薄緑のトラックに乗せ、海岸でボートに乗せ換え、沖に停泊の船で外国へ売飛ばす算段の回に、京急1000がでて三浦半島を連想させたのを観ました。あとはNHK特集紀信激写の山口百恵さんのスライドに京急1000がありましたねぇ。
by ぱす (2012-10-17 00:06) 

UZ

記事を拝見していて、こうやって見るのもいいなと感じました。
今村監督の作品でも(当時は現在のテレビ番組並みに多くの作品が公開されていたようですが)現在につながる視点があったのですね 。
by UZ (2012-10-17 06:48) 

狂電関人

Cedarさま

映画シリーズ。今回も楽しく拝見させていただきました。
昭和36年。私が生まれた年です(笑)
700系、私も好きな車でした。
確か新子安で撮ったような気がしますので探してみます。
それと230+140+230初めてこのトリオ編成見ましたが、これで100Km運転ですか、
真ん中の140に乗ったらジェットコースターでしょうね!
by 狂電関人 (2012-10-17 06:58) 

はーさん

700形も印象に残りましたが、230+140+230の編成には実際に乗ったことが何度かあります。
140はバネが柔らかく、ふわふわとした乗り心地が印象に残っております。それと、屋根から雨もりがして、車内で傘をさしたのも覚えております。
このアンマッチングな編成に赤と黄色のツートンカラー、戦後のまだ、戦災のキズもいえやらない時代の京急の象徴のようなものですね。多分、100km/hなどでは走っていないと思います。
赤系統一色の戦前の230をわずかに覚えていますが、このツートンカラーにもがっかりしたものです。500、そして、700が走り始め、レッドに白帯のカラーになり、好きな京急が小生の中では、よみがえりました。
by はーさん (2012-10-17 12:14) 

Cedar

■ぱす様
東京バイパス指令~ありましたね!横須賀のエピソードは記憶に無いですが・・・百恵ちゃんと横須賀も切り離し難いですよね。横須賀=京急なのは、横須賀線=鎌倉のイメージが強いのでしょうか?
■UZ様
今村監督の映画はテーマが割と普遍性があり、描写に勢いがあるので今見ても通用する所があります。
映画の時代を映す背景として、視点や時間の切り替えのキッカケとしての鉄道は様々に登場します。
■狂電関人様
映画シリーズも病膏肓に入りまして、映画の鉄シーンばかり探してしまい肝心のストーりーがおろそかになりそうです。
140の100km走行は揺れたものの柔らかい乗り心地でした、さすがアメリカ生まれの台車だから、乗り心地もアメ車?
■はーさん様
230+140+230には私も何度か乗った記憶があり、特に印象深いのは、正月の川崎大師直通急行(ダルマ急行)でした。この時は間違いなく100km出してましたよ。わざわざ中間の140に乗ってMCB台車独特のふわふわした乗り心地を楽しみました。

★やまびこ3様
★yakitorimitbier様
★oomori様
★あおたけ様
★nd502様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2012-10-18 00:00) 

Chitetsu

京急の電車はやっぱり格好良いですね。700時代の大きいヘッドライトの湘南顔も600になってからの細いヘッドライトに前パンタどちらもうっとりして仕舞います。
230と140のダルマ急行の疾走、体験したら体がフリーズしてしまいそうです!
by Chitetsu (2012-10-18 07:05) 

Cedar

■Chitetsu様
昭和30~40年代の京急は吊り掛けカルダン入り乱れて爆走してました。今のように高架化も進んでいなかったので、都内の地上線で沿線の洗濯物を巻き上げつつ突っ走るのは痛快でした。
230も頑張ってました。

★プント様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2012-10-18 18:50) 

伊豆之国

昨年の大震災の前日に社用で横須賀を訪れ、そして名物「海軍カレー」を味わうこともできたのは以前にも書き込みましたが、そのとき歩いたのはまさにその汐入~横須賀中央駅界隈。汐入駅近くの工事現場の調査から、「どぶ板通り」の海側の大通りを歩き、震災以降大いに世間からたたかれている某半官営企業の支社で打ち合わせを行った後、横須賀中央駅から再び京急に乗って帰社しています。
汐入駅の裏手の高台は、海軍関係によって開発されたとも言われている眺望絶佳の高級住宅地として知られていたそうですが、近年では住民の高齢化が進み、階段の上り下りが苦痛となったり、宅急便の配達も車が登れず不自由するなどで、近年空き家が目立っているということが、テレビ番組で放映されたことがありました。
それにしても横須賀駅と横須賀中央駅の、乗降客数と駅前の繁栄度のこの恐るべき落差。私が先の夏休みに訪れた鹿児島でも、西鹿児島改め鹿児島中央駅の繁栄と鹿児島駅の静寂ぶりの対比を目の当たりにしたのですが、横須賀の場合はそれ以上の大差になっているような気がします。
by 伊豆之国 (2012-10-20 09:46) 

Cedar

■伊豆之国 様
若い頃は用も無いのに横須賀辺りも出かけたものですが、最近はトンとご無沙汰です。ドブ板とおりもいまや観光地化しているようだし、米兵相手のハンバーガーショップやレコードショップも様変わりしてるんでしょうね~
今の横須賀に私が行ったら浦島太郎ですね。
JR横須賀駅があまり変わらないのは、単に投資する意味が無いからなんですね。

★キャプテン・スキャバーズ様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2012-10-20 23:50) 

hanamura

横須賀の風景、沿線は変化すくないです!(記憶が美化?)
この回、すっごく、うれしかったです!(元横須賀市民)
by hanamura (2012-10-21 20:59) 

Cedar

■hanamura様
横須賀市民でいらっしゃったのですか?あの街はなかなか個性的ですね。
by Cedar (2012-10-21 21:27) 

なにわ

さっき、BSプレミアムの再放送を見ておりました。
喜劇という気はしませんね。社会派作品でしょう。オスプレイならぬメスプレイは当時からあったわけですし。

ところで丹波哲郎が飛び込もうとしたところ、中間車が3扉だったのではないでしょうか。私には800に見えたのですが。
そして、ラストで眼が行ったのは、左の方に見える留置中の妙なベンチレーター配列の二重屋根客車でした。あれはスシ28あたりなんでしょうか。
by なにわ (2013-01-15 17:14) 

Cedar

■なにわ様
こめんとありがとうございます。
丹波さんの飛び込み未遂シーンの電車が3扉でしたか・・だとすると初代600かな?800ということは2枚窓の1000ですよね。
ラストシーンの客車は気が付きませんでしたが、自分の記事の画像をよく観ると、確かになにやら見えますね~
by Cedar (2013-01-15 19:08) 

なにわ

そうじゃなくって、700+800+700の6連だったんですよ。
デビュー当時は混用されたのですから。
もう1000に改番されてたかもしれませんが。
by なにわ (2013-01-16 22:11) 

Cedar

■なにわ様
700と800の混結6連とはすごいですね。
こりゃもう一度レンタルしてチェックしてみます。
by Cedar (2013-01-16 22:47) 

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