SSブログ

ワンダーランドへ~(2004年7月のボストン、その3) [外国鉄写真(昔)]

前回に続いて、2004年7月に訪問したボストンのブルーラインの乗車記です。

(1)BOSTON BLUE LINER.jpg            この路線の地上区間にはちょっと面白い歴史があります。今日はそのお話がメインです。

(2)BOSTON BLUE LINE19R.jpg        ここはOrient Heightsいう駅で、支線のように右に分岐していくのは車庫線。この駅から先の線路には、もともと別の鉄道の列車が走っていたのでした。

某ファンサイトに載っていたブルーラインの路線変遷図です。くどくど説明するより、このほうが分かりやすいですから~

BOSTON BLUE LINE001R.jpg(3)路線図の右上に描かれているライトブルーの路線が、1940年まで現在のブルーライン地上部分の線路敷を走っていたBOSTON REVERE BEACH & LYNN RRという鉄道でしたが・・

~この鉄道はなんとナローゲージ!更に途中から電化=電車化されたユニークな鉄道だったのです。

(4・5)下の2枚は電化前と電化後の始発駅East Bostonの姿、発着線の数やホームの大きな屋根など、ナローとは思えない堂々とした佇まいです。EAST BOSTON R.JPGboston022R.jpg

このターミナルはボストンの市街地から海を挟んだ対岸に位置して、市内へは下の画像にあるフェリーが連絡していました。海底トンネルの技術が未発達の頃には、サンフランシスコやNYにも見られた形です。

(6)rb_rRr.jpg

この鉄道~「インタアーバンは面白い」のシリーズで取り上げても良いくらいです。大都市ボストンの近郊を走るナローゲージの木造電車、支線の一部以外は全線複線で本格的なカテナリーの架線、最大6~8両編成(!)もあったのに、(ここでもやはり)集電はポールだったのですから。日本の常識では<有り得ない>電車ですね。

(7)BR&L04R.jpg           走っていたのはこんな電車でした。NYやシカゴの高架鉄道にも見られたオープンデッキスタイル、運転台は左側の車内にあります。下回りは片方がブリル形の電動台車、片方は客車形の付随台車のようです。BRB and L Narrow Gauge Electric Circa 1930s.jpg(8)

電化されたのは1920年代、廃止は1940年のこと、長らく打ち捨てられていた線路敷地に標準軌の電車が走り出したのは1952年から(そういうことも上の路線図に細かく記載されていますね)・・・

(9)Suffolk Downs ~Beachmontの直線区間、ナローの木造電車が走っていた線路敷地をそのまま使っています。BOSTON BLUE LINE20R.jpgこのあたり、今はそれなりのスピードで走りますが、ナロー時代の速度はどのくらいだったかな~?

(10・11)BOSTON BLUE LINE22R.jpgBR&L02R.jpg

(12)おおっと!なぜかこのカーブには1435mmの間にナローの線路が!~って言うのは真っ赤な嘘です~当然単なるガードレール。BOSTON BLUE LINE21R.jpg

とかとか~ナロー時代に思いをはせつつ(!)到着したのはRevere Beach駅。

Blue_Line_trains_at_Revere_Beach.jpg(13・14)

BOSTON BLUE LINE24R.jpg       アメリカ最初のPublic Beachとして、古くから様々な娯楽施設が作られて賑わっていた頃の写真がホームのサインに使われていました。今の電車と一緒にナロー時代のSLも描かれています。

(15)実際にはこんなのが走ってたらしいですが・・brblrr_no12_4x2.jpg

ここはNYのコニーアイランドと同じく、都会に暮らす庶民のリゾートとして開発されたようです。

(16)brblreverebeach1910.jpg

(17)ナローSL時代のCrescent Beach(今のRevere Beach)駅です。BR&L03R.jpgこの絵葉書に写っている陸橋は、(13)で電車がくぐっている陸橋ではないでしょうか。

上の画像を見ると電化の際にSL時代の客車の片端にキャブをつけ、屋根にポールを載せて電車化した、ということがよく分かります。(18)BR&L05.jpg

ナローのSLから電車へ、そして現在の地下鉄へと、鉄道の姿は変っても、都心から気軽に地下鉄で行けるビーチリゾートとして、Revere Beachはそれなりの賑わいを見せているようです。

(19)Revere_Beach-Boston_500x375.jpg

そういうところもコニーアイランドと似ていますが、こちらの方がヤバイ感じはず~っと少ないようです。

Revere Beachで道草喰ってしまいましたが、2度と来ることも無かろうと、取り敢えず終点のWonderlandまで行ってみました。

ま、こんなところでした・・・ちなみにナロー時代はBath Houseという駅名で(ヘルスセンターの大ローマ風呂のような室内プールがあった)、少し先の街Lynnまで、複線の線路が伸びていました。

(20~23)

BOSTON BLUE LINE25R.jpgBOSTON BLUE LINE27R.jpg

単なる郊外の住宅地っていう感じで、特におしゃれでも高級でもない~

<どこがワンダーランドやねん!?>boston-wonderland.jpg                        と一人呟きつつ、折り返しの電車で都心に戻ったのでした。

BOSTON BLUE LINE26R.jpg             以上、今からちょうど8年前の7月、ボストンでの電車三昧のご報告でした。


nice!(9)  コメント(18)  トラックバック(0) 

nice! 9

コメント 18

Junior

 
ムハハ、やはり続編はこう来ましたか!
Wonderland駅、昔の駅名はBath House・・・つまり「風呂屋」。
何にしても不思議な駅名でありますねぇ。

(11)の写真を見ると判りますが、このナロー・ゲージ鉄道、枕木の規格はスタンダード・ゲージのものと読んだ事があります。
でも、(5)の写真を見ると、ターミナルの枕木は必ずしも全部そうではないような気がするんですけど・・・。
路線の経緯や使用されたメイスン・ボギーのロコ等はTadさんの専門でしょうが、元のBRB&L RR.の終点、LynnまでのBlue Lineの延長計画はどうなったんでしょ?

by Junior (2012-07-25 12:08) 

Cedar

■Junior様
ムハハハー!やはりこうでした。
実はRevere Beachのレストランでビールなんぞ飲んでしまい、やる気をなくして写真を碌に撮らなかったので、歴史ネタに逃げました。
確かにナロー時代の枕木は異常に長いですね。地下鉄になってもそのまま使ってたりして~
な訳ないですね。

by Cedar (2012-07-25 14:21) 

nexus6

Wルーフにオープンデッキの客車が電車に化けた!
もう堪らなくステキな世界ですね。 こういった些か変り種も含めて、米国の鉄道黄金時代をナマで見たかったな~
by nexus6 (2012-07-25 22:26) 

Cedar

■nexus6様
この電車モドキを模型で作りかけました。
バックマンのOゲージナローのコーチのデッキに運転台窓を開け、屋根にポール、片方の台車を路面形に~。
本物と同じプロセスでした。
アメリカ鉄道の何でもあり感は、ホント楽しいっす。

★プント様
★UZ様
★COLE様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2012-07-26 10:52) 

Junior

 
> この電車モドキを模型で作りかけました。

てぇ事は、完成しなかった?
完成しなかったのは、この電車にアンチクライマーが付いていなかったからと、見た!!(笑)

ところで、以前からズ~ッと気になってたのが、Revereって地名。
場所柄独立戦争時の愛国者の代表・Paul Revere(ポール・リヴィア)と関係あるんだろうなぁと思ってたら、案の定、町が彼にちなんで町の名をRevereに変更し、そのRevereの町の浜なので、Revere Beachだったんですね。
 
by Junior (2012-07-27 00:56) 

Cedar

■Junior様
モドキが挫折したのは、アンチクライマーじゃなくってベスチィブルが無いのが嫌だったんですね。
で、バウザーのエンドを同じくバゲージに付けたのが、例のBig Boxってわけです。

Revereは私もポールリヴィアに所縁ありと思ってました。
そう言えば『ポールリヴィアとレイダース』ってバンドがありましたが、あれはなんだったんだろう?

by Cedar (2012-07-27 03:03) 

Tad

BRB&Lは1875年開業で,1928年に電化するまではメイソンボギー(2-4-4-と2-4-6)が木造客車を牽いて走った旅客鉄道。一般鉄道には珍しく貨物輸送はしてません。基本はボストンへの通勤客輸送と,リヴィアビーチへのリゾート客輸送で,本線は10マイル足らずと云いますから15キロ程,東京駅からだと川崎くらいまで距離。そんな規模にもかかわらず電化時でも26輛の蒸気機関車がいたと云うからスゴイですね。
客車は全部で96輛あったそうですが,そのうち60輛が電車(MU)に改造されてます。それでこれまたスゴイと云わざるを得ないのが,編成運転では輛数に関係なくポールを上げるのは1輛のみだったんですよ。手許にある本の6連の写真でも4輛目の1本だけ。
運行速度やそれを推し量る記述がないので何とも云えませんが,全線ほぼ平坦な路線ですから80キロくらい出していてもおかしくないのにワンポール! 時速60キロとしても南端のイースト・ボストン・ターミナルから北端のリンまでは,停車時間を入れても20分かそのくらいですかね。

上の古い時代の写真について少々記しておきますと,5がイースト・ボストン・ターミナルで,奥に見える車庫の向こうがフェリー乗り場。ここからボストン市内に湾を越えてフェリー(1940年の鉄道廃止時点では4隻あった)が通っていました。この写真を撮った人が立っているはトンネルの上で,右下に見える段々がトンネルポータルの上縁です。
7の電車の動力台車はブリル177E2,これも含め在籍した電車(客車改造以外も)はすべてニューハンプシャーの車輛メーカー,ラコニア製。
11の枕木の話がありましたが,これはスタンダードゲージ用で,開業当初からこれを使ってました。使った理由は「入手しやすさと価格から」と云うことで,改軌を考えていたわけじゃありません。電車の元となった客車はスタンダードゲージ・サイズのを作らせたと云う話を別の本で読みましたが,確かに幅はナローにしちゃ広いですけど,人が写ってる写真からすると高さはスタンダードにしちゃ低いですから,よく云えばハイブリッドみたいなものかも。

手持ちの本のBath HouseやRevere Beachの駅が写ってる写真にはローラーコースターが写ってます。リヴィアビーチには都合5つのコースター(サイクロンとかサンダーボルトとか今でも使われそうな名前がついてます)があったそうですが,このあたりもコニーアイランドと似てますね。
by Tad (2012-07-27 04:39) 

Cedar

★やまびこ3様
★undo様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2012-07-27 08:49) 

Cedar

■Tad様
BRB&Lの詳細補足、ありがとうございました。
この鉄道、そもそもナローで開業したのかが私には不思議です。
資材や車両の出ものがあって初期投資が抑えられたとか?
6連でポール1本も不思議だし、やはり日本の常識ではあり得ない鉄道って気がします。
でもリヴィアビーチののんびりムードは良かった。ボストンエールもコクがあって、アメリカ風=馬のシ❌❌ベンみたい=じゃなかったし。

by Cedar (2012-07-27 09:56) 

なにわ

往年のナローってのは3フィートなんですよね。そこまで中途半端なら、
標準軌間で建設してもとおもいますけれど、3フィート6インチで幅3m近い電車を16両もつないでいた国もあったわけですし。

電化が28年で、廃止が40年、レベルアップに金注ぎすぎてあぼーん。
同じようなことをした国(先の国と同一かは知らない)もありましたけど。

ニュー・イングランドってのは、USAというより、イングランドの面影プンプンでしょう。
サッカーさえプレーしているそうですから。
by なにわ (2012-07-27 18:27) 

Cedar

■なにわ様
アメリカのナローは3フィートが主流です。ま、JRだってアメリカ人からみればナローだし。
ボストン近くのメイン州には2フィートもありました。
あの辺の言葉ボストン訛りは、気取った発音で確かにイングランド風です。

by Cedar (2012-07-27 20:57) 

Cedar

★arail206様
nice!ありがとうございます

by Cedar (2012-07-27 22:26) 

Tad

BRB&Lがナローゲージで建設された最大の理由はスタンダードゲージの2/3でできるというコスト面。路盤建設や線路敷設の費用と,小さい分車輛が安かったからです。
ナローのパイオニア,リオグランデが定期運行を始めた1872年にセントルイスでNatinal Narrow Gauge Railway Conventionが開催されて,ナロー建設熱(ナローゲージ・フィーヴァーと呼ばれてます)が高まった背景もあります。このナロー熱のピークは2度目のコンヴェンションがシンシナチで開催された1878からの5年ですけど,BRB&Lが1875年開業とかなり早い部類に属するのは,すでに人口が多かった“拓かれた”ボストンという地域性もあるでしょう。何せ人口が少ない西部とは違って旅客輸送での収益が予測できたわけですから。
このフィーヴァーにのって建設された多くのナロー鉄道は,かなり早い段階でスタンダードゲージに改軌されてしまうんですけど,それは貨物輸送ではゲージが違うスタンダード鉄道に貨車の乗り入れはできないので,いちいち人海戦術で積み替えなけりゃならなくて,これが建設コストの安さとは逆に経費のアップをもたらしたからなんです。
その点,BRB&Lは貨物輸送はしていなかったので改軌の必要性はなかったから,ナローのままで一生を終えたわけですね。
ちなみにその当時採用されていたゲージは,3ftが95%と圧倒的なのは確かですけど,以下3ft 6in,2ft,3ft 2in,2ft 6in,その他…てな具合です。
by Tad (2012-07-28 03:59) 

Cedar

■TAD様
>3ftが95%と圧倒的なのは確かですけど,以下3ft 6in,2ft,3ft 2in,2ft 6in,その他…てな具合です。
そうなんですね、BRB&Lを初めとする3Ftと日本の1067mmはたった6インチしか違わないのですね。
古いTMSに中に、MRの編集長が来日した際、D51を見て「ナローにしてはバランスの取れたロコだ」という発言に、国鉄はナローなんだと再認識した、いう文章が載っていましたね(厳密には16番とHOの話の関連だったかも知れませんが・・)。
しかし、Natinal Narrow Gauge Railway Conventionで売り込むとは、資本主義のアメリカらしいです。
by Cedar (2012-07-28 08:04) 

紅玉国光(富山市)

BRB&L時代の路線が営団(MBTA)に引き継がれ、全部改軌されて再生した訳ではなかったのですね……。残念。支線とか残っていたら面白そうだったのに。(リンまで復活しなかったのは、B&Mの客車列車と競合すると見たからでしょうか?)
それにしても、BRB&Lが電化の際に改軌しなかったのは一寸不思議です。そこで市内の路線に乗り入れられる様に……とは考えなかったのでしょうかね。そうしていれば、一旦廃止→改めて営団の手で標準軌路線として再建 と云う、二度手間も省けたろうに。
ついでに、冬、死ぬ程寒い事で有名なボストン郊外で、客車改造電車が戸どころかヴェスティビュールすら無い完全オープンデッキ、と云うのは、幾ら運転台は室内(デッキ付旧型電気機関車の感覚なのか?)とは言え、乗客も乗員も皆、よく我慢したものですね。(まぁ外に出る人はコート位着ているでしょうけれど……)

D51がナロー機?と言われると、我々日本人は「はぁ?」ですが、確かにコロラド地区の914mm(3ft.)軌間の鉄道網で使われたコンソリ機やミカド機は、D51に近い大きさだったので、米国人の感覚からすると、そんなものかも知れません。
by 紅玉国光(富山市) (2012-08-04 10:50) 

Cedar

■紅玉国光(富山市)様
>支線とか残っていたら面白そうだったのに・・
記事の中のOrient Heightsの分岐=ナロー時代に支線が分岐していた当時の路盤そのままではないか、と私は睨んでいますが・・・。
>BRB&Lが電化の際に改軌しなかったのは一寸不思議・・
改軌と同時に新車に入れ替える金が無かった!のが最大の理由でしょうネ。
>客車改造電車が戸どころかヴェスティビュールすら無い完全オープンデッキ、と云うのは、幾ら運転台は室内(デッキ付旧型電気機関車の感覚なのか?)とは言え、乗客も乗員も皆、よく我慢したものですね
このタイプの電車(高架蒸気鉄道の客車の改造)はNY、シカゴ、など各地にあります。とにかく金をかけずに電(車)化するためには背に腹は換えられん、というところでしょう。

>D51がナロー機?
でも厳密にはそうですよね。南アフリカと日本がナローの中ではずば抜けた水準の車両を持っていたのですが、中華思想のアメリカ人には関係ないですから。

by Cedar (2012-08-04 15:20)


by Cedar (2012-08-04 15:38) 

OER3001

fbでの書き込みからこちらを拝見しました。詳細な解説をありがとうございます。
小生はN.Yからシャトル便でボストンに行った際、Airport~GovernmentCenter間を1往復していますが、こんな歴史があったことを知っていたら・・・、是非終点のWonderlandまで行ってみるべきでした。
by OER3001 (2021-02-28 07:29) 

Cedar

■OER3001様
詳細な解説はTadさんコメントの方ですね。でもこの時の訪問がきっかけになって、今のモケー狂騒曲につながったわけです。ブルーラインのこのころの電車も好きな形でしたし。
ボストンもこのころが一番面白かったのではないか、と思います。
Revere Beachののんびりムードも良かったし。
by Cedar (2021-02-28 12:17) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。