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映画『鍵』の鉄シーン [映画・音楽]

このあいだの3連休は電車バーで遊んだかと思うと・・・
連休の定番、映画DVDも何本か観ました。
そのなかから、1959年の大映映画『鍵』の鉄(乗り物)シーンを報告します。
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あわせて映像言語=表現手法についても語らせていただきます。
一応鉄&乗り物を使ってますが、鉄ブログ読者の方は興味無いかも・・。

ご存知谷崎潤一郎の原作を、映画は大胆に脚色しています。鍵01.jpg(2)
舞台は京都、古美術鑑定家の一家と、そこに出入りする医学生が織りなす異常な色模様を、スタイリッシュに映像化しています。
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タイトルロールはなんと走る市電の床下ショット流れる線路の主観移動にびっくりします。
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主演の4人(↑)は、ドロドロしたエゴイズムむき出しの人物を揃って怪演しています。老いと欲望に葛藤する中村雁治郎と、変な眉毛の叶順子が凄い。市川督+宮川一夫カメラマンがいい仕事してます!鍵05.jpg(5)
このカット、ボギー台車の後ろにカメラを付けたように見えますが、ホイールベースが妙に長く、フェンダーらしきものの位置と形がどうも怪しい〜トロッコのようなカメラ用造りものだと思います。


窓下の細いシルが特徴の市電600形から降りるシーンは印象的。歳とともに体力が衰えて、若い妻との暮し(主にナイトライフ~)に不安を覚えている主人公が、妻に内緒で医者から帰ってくる冒頭です。
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(6・7)

ところが病院を訪れた妻はそのことを知ってしまい・・夫に秘密で情報収集。
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(8・9)

(10・11)夫が歩いて帰った道をタクシーで帰宅します。鍵10.jpg鍵11.jpg
このタクシー、かわいいです。

さらに夫婦の娘は医学生と婚約していて、これも事情を知っている、ってわけですね~
(12~14)
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娘も市電で帰ってくる、こちらは800形でしょうか?

冒頭の一連のシーンでは、3人の帰宅風景を場所&カメラアングルを合わせて撮り、同じ家に住む家族なのに3者3様、胸に一物ある呉越同舟ぶりを際立たせ、全員がお互いのやってることを秘密にしている、という親子の不気味な関係が立ちのぼってきます。
『リフレイン』と呼ばれる映像手法は後半にも使われます。



ここでちょっと鉄ブログ~(5)(14)の場所はひょっとしてここではないでしょうか?
アングルも撮影年代も違うものの、カーブの感じが似ているような~
s47大徳寺付近02オリジナル.JPG(15・16)s47大徳寺付近01オリジナル.JPG
衣笠の北大路と西大路の角あたり、昭和47年、Cedar撮影です。

根拠は全くなく、ここだったらちょっと面白いなあ~みたいな・・・。


※犬王町様から早速場所の同定をいただきました。s47京都正月03錦林車庫05.JPG
天王町の写真もありましたので掲載します。右の塀が同じですね。

ありがとうございます!


映画に戻ります~鉄とはあまり関係ないシーンが続きますが・・・
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(17)夜になって医学生が家にやってきます。当然昼間のことは秘密秘密・・嘘で固めた和やかな歓談~

各々の欲望のエゴイズムが古い家の中に渦巻く~

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(18・19)男みたいな太眉毛の叶順子さんと、対照的な細眉毛の京マチ子さん。
ほとんどギャグともいえる役つくり~

あ、当時としては脱ぎっぷりもなかなかです
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(20~22)

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(23)夫は、妻と医学生をわざと近付けて、己の嫉妬心によって欲望をかき立てようとし・・・
(24・25)
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(26・27)
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(28)娘は親の異常な愛慾と、母と婚約者の妖しい関係に刺激され・・・鍵49.jpg

(29・30)妻は、夫を興奮させて死期(?)を早めようとする・・鍵48.jpg
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いやはや、純文学というか、インモラルというか・・日本の旧家とエロチシズムは不思議と相性イイですね。
中村雁治郎さんがなんともすごい。


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(31)医学生は算で娘と関係を続け、母親にも惹かれていく・・・純文学ってなんて不道徳!



ここでまた『映像言語』=鉄シーンであります。

医学生とへんてこ眉毛の娘がいつも会うのは大阪、貨物操車場の横の侘しい旅館。鍵28.jpg鍵26.jpg
(32・33)古枕木の柵越しに、天六荘という看板が見えてますね~ま、架空の場所でしょう・・

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(34・35)母親の写真を見せつけ、ベッドに押し倒します。

さて、いよいよベッドシーン!
と思ったら、画面は操車場に切り替わり・・・以下のような展開に・・

古典的といえば言える『モンタージュ』ですが、なかなか分かり易い!
(初めに部屋の畳にSLのシンダが吹き込んでくる~これはちと難解でしたのでキャプチャ無し)
(36~44)
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繰り返される自連の噛み合うシーンやら鍵35ー1.jpg

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連結の衝撃で前後動する貨車やら

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踏ん張るロッドのUPや汽笛一声のクライマックスやら・・・鍵36.jpg

激しいテンポに思わず笑っちゃう~カンヌ映画祭の審査員も、笑いながら観てたんでしょうね~
この手のモンタージュは外国映画でも見られますが、これはなかなか凝っています。

凡な監督なら、女の顔アップなんか途中に入れちゃう~さすが市川さんですね!

あ、この映画はカンヌ映画祭の審査員特別賞をゲットした『名画』なんですよ~。

京都、古美術、能面のような化粧と動作などの日本的なものと、生々しいお話とのコントラストが外国では評価された作品です。日本でもキネ旬9位だったかな?~キネ旬って懐かしいですね。

やはり60~70年代当時は『エロはゲージツ』だったわけです!
なにしろあの『無常』(※)だってイタリアの映画祭でグランプリですから・・
(※→http://cedarben.blog.so-net.ne.jp/2015-03-27

~どろどろとお話は進行して~

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(45・46)夫は妻の裸身を冥土の土産に死を遂げます。

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(47)思わず『死んだ・・』と笑みを浮べる京マチ子さんの演技はコワい。

(48)人が最後に乗る乗り物=霊柩車が家の前の道を行きます。鍵42.jpg

(49~52)そして残った3人も、家政婦が作った毒入りサラダ(↓)を食べてしまい・・・・鍵43ー1.jpg鍵43.jpg鍵44.jpg鍵45.jpg

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(53)同じ場所を今度は3台の霊柩車が行きます~映画の冒頭&ラストに印象的な『リフレイン』が使われていました。

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(54)~ってな映画です。いやはやなんとも・・・

昔TVで観た時には鉄シーンにはほとんど気がつきませんでしたが・・・

それとは別に、主人公と同世代になっちゃった爺鉄Cedarには、妙に切ない(ご存知のように、妻はいないんですがぁ)お話ではあります。

ではまた。


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犬王町

5、14は天王町ですねー。
東山をバックに電停は丸太町通りの天王町電停。
線路が左折すると白川通り。
正面に見えているのは岡崎つる家の料亭で建て替わってはいますが現存。
タクシーはその奥、白川疎水沿いの哲学の道を走ってます。
京都で一番金持ちの住むエリアということで間違いないと思いますー。
by 犬王町 (2015-10-17 09:07) 

Cedar

■犬王町様
ロケ場所の同定おおきにありがとさんどす。

ここで撮った写真があったので追加掲載しました。
錦林車庫近くのこのエリア、けっこう好きな場所で、熊野神社から電車撮りつつ、ぐるっと百万遍まで行き、グランドミリオン(交差点の3方に渡り線があるのは珍しかった)を行きかう電車を眺めたあと、進々堂でマッタリする、なんてやってた頃を思い出します。

★あるまーき様
★モボ様
★hanamura様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2015-10-17 11:11) 

のり

谷崎潤一郎の小説には、「鉄」が結構登場しますね。
細雪や蘆刈など、阪急・国鉄・舊京阪・新京阪…。
卍や鍵など前衛的なエロスも多く、読むのに勇気が要ります(笑)。

関西旅行が迫ってきましたね。お気をつけてご来阪下さい。24日の朝、南海住吉大社駅改札口前にてお待ちしています。多分7時過ぎですよね。お逢いできる瞬間まで連絡の取りようがないので、この場をお借りしますがご容赦ください。
by のり (2015-10-17 12:24) 

Cedar

◼︎谷崎は元々東京生まれなのに、最後は関西に行ってしまった人、その辺も興味深いです。
さて、24日朝の件ありがとうございます、楽しみにしております!

by Cedar (2015-10-17 13:03) 

八犬伝

凄い展開ですね。
天六荘のすぐあとに、連結器のシーンには
上手い表現ですね。
by 八犬伝 (2015-10-17 15:01) 

Tosi

『他人の顔』の主人公とその妻を演じたふたりの何年か前の出演作なのですね。ということは勅使河原宏は配役を決める際、この作品のことを意識していたということがありえますね。
by Tosi (2015-10-17 19:18) 

UZ

どっかで見たことあるかと思ったら天王町の電停ですか。
先日家族で近くの岡崎神社へ出産のお礼参りに行きましたから。
あのESSOのガソリンスタンドには現在確かドトールコーヒーが併設されてます。参拝後の休息に利用したことがあります。違っていればごめんなさい。


by UZ (2015-10-18 06:37) 

Cedar

■八犬伝様
すごいでしょう~こういう映画はある意味古くならないかも・・
操車場のシーンは何度見ても笑えます。
■Tosi様
他人の顔~何故か見逃しています。
勅使河原の映画はほとんど観てるんですが、この作品から7年後の作品ですですから当然意識してたでしょう。
■UZ様
天王町のあたりもずいぶん変わったんでしょうか、京都ももう10年以上行ってないので。

★大和様
★mangahara様
★シュウチャン様
★nd502様
★arail206様
★芝浦鉄親父様
★あおたけ様
★ぷっぷく様
★AKI様
★やまびこ3様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2015-10-18 10:37) 

Cedar

★ひでほ様
★とーる様
★gardenwalker様
nice!ありがとうございます


by Cedar (2015-10-18 17:00) 

京葉帝都

設定と展開がドロドロしたストーリーをその時代を代表する俳優たちが演じるあたり、Cedarさんのキャプチャーと解説だけでも楽しめます。
この小説&映画の断章に見られるような、彼女と母親の両方に△▽的衝動を覚えた、京マチ子さんや叶順子に似た女性が周りにいた、貨車の入れ替え作業している場所の近くでデートしたなど、自分に心当たりがあってニンマリされた御仁もおられるのではないでしょうか。
中村雁治郎さん、昭和40年代にヒットしたテレビドラマ「船場」では後半から登場し、味のある演技でお茶の間を魅了しました。
by 京葉帝都 (2015-10-18 19:09) 

Cedar

■京葉帝都様
この映画の出来事が自分とかぶる人は・・・いますかねえ?
雁治郎さんは昭和3~40年代にはさまざまな役柄で活躍しましたね、お嬢さんとの競演も何本かあったような・・

★mentaiko様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2015-10-18 22:51) 

Cedar

★sori様
★宝生富貴様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2015-10-19 10:15) 

Tosi

『他人の顔』のなかにはわずかですが失われた渋谷駅の嬉しい場面があります(この動画の6分50秒ごろ):
http://www.dailymotion.com/video/x9yvid_le-visage-d-un-autre-5_music
by Tosi (2015-10-19 18:31) 

Cedar

◼︎Tosi様
情報ありがとうございます。あいにくdailynotionのアプリ未入手なので後で観せていただきます。


by Cedar (2015-10-19 19:59) 

狂電関人

Cedarさま

エロいですねぇ。
シュールですねぇ。
勉強になりますねぇ。
それでは、さよならさよならさよなら(爆)


by 狂電関人 (2015-10-20 12:58) 

Cedar

★狂電関人様
はい、エロいです、シュールです。
でも映画の基本はしっかりしていますから何度観てもあきないです。

by Cedar (2015-10-20 20:43) 

Cedar

★sonic様
nice!ありがとうございます

by Cedar (2015-10-26 10:59) 

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