SSブログ

モダンアート・アメリカン展の鉄分について。 [アート・本]

先日(12月12日)まで、六本木の国立新美術館で開かれていた絵画展に行ったお話しです。   アメリカのアートにも色々な流れがありますが、私のお目当ては大好きな画家、チケットにも使われている、エドワード・ホッパーの作品でした。新美術館チケットR.jpg(1)  え~一応鉄分ありますので、最後まで読んでください~

(2)今回の展覧会のハイライトでもあるこの作品、ホッパーの<Sundayホッパーと高架鉄道004R.jpg              NYのハドソン川を挟んだ対岸、ニュージャージー州ホボーケン(HOBOKEN)の街角の情景1926年の作品で、<明るい色彩のなかに、20’sの不安定な時代と、大都市近郊住民の不安と孤独が鋭く捉えられている>という評価の高い絵です。~でもこういう情景って、アメリカの下層階級エリアでは、今でも割と日常的風景な気もするんですけどね・・・。

(3・4)ちなみにホボーケンには15年くらい前に行ったことがあります。かつてのエリー・ラッカワナ鉄道のターミナル駅があり、今は通勤鉄道の始発駅となっていますが、駅構内以外はヤバイ雰囲気が漂ってました~NYの繁栄をハドソン川越しに見つめる下級働者の町、って感じでした。~ライトレールが開業した今はだいぶ変わっているようですけど・・・HOBOKEN.jpgホボーケン03R.jpg

 


次のホッパー作品はこちら

(5)今回の展示で一番印象に残ったのはこれ~というよりこれを見に行ったのでした。ホッパーと高架鉄道002R.jpg              <Approaching a Cityこれはまさしくホッパーの傑作です。初めて訪れる大都会への期待と不安を主題とした作品です。都会の入り口が地下線のトンネル、という暗喩はすばらしいですが、これもアメリカの近代都市風景の典型ともいえるでしょう。バックの建物の無表情な質感と色彩、人の気配の無さと、トンネル周りの壁の色・・旅人の不安を実に的確に表現していますね~。

とかなんとか・・・別に美術評論家でもないのにエラそーなこと言ってしまいました。でも、そのくらい深~い、アメリカ人画家ならではの作品だと思います。

鉄ブログ的考察をひとつ、この絵は特定の場所をモデルにはしてない、と言うことですが、私にはここのイメージが・・・

(6)NYのグランドセントラル・ターミナルへの地下線入り口です、大都会の象徴はやはりNY・・ホッパーの描いた線路がサードレール式だったから、というのは鉄マニア的なコジツケですけど。デンジャラスNY07パークAVE01.jpg            ホッパーがこの絵を描いた1946年頃、トンネルの手前はまだあまり拓けておらず、一方トンネルの入り口上にはNYの摩天楼が見えていたはずですから、その対比にインスパイアされたのではないか?

~などということを考えつつ、絵の前にたたずむこと20分。そんな輩は私だけでしょうね(笑)。


ここからは展示以外のホッパーの作品です~

ホッパーの作品には、鉄道施設とその周辺を描いたものは結構ありますが、その中からひとつ

(7)<Railroad Sunset>という作品、生涯にわたり、ニューイングランドや中西部。メキシコなどを旅したホッパーにとって<旅>は重要なテーマでした。単なる風景画ではなく、旅のモチーフを通して人の孤独(Lonelyness)が描かれているのが、素敵なのですね。RAILROAD.JPG

旅人の孤独とともに、都市生活者の孤独も彼の作品の重要なテーマでした。NIGHTHAWKSR.jpg(8)  その中でも私が大好きなのが<Nighthawks>という作品・・・深夜のダイナー(軽食堂)の情景を描いたこの絵はあまりにも有名ですね。アメリカの鉄道模型雑誌で、この光景をそっくり再現したレイアウトを見たことがあります。

NIGHT HALKS R.jpg(9)日本のレコードジャケットにも使われていました。<モンローウォーク>や<スローなブギにしてくれ>などのヒット曲を持つシンガー&ソングライター南佳孝のアルバムに~。都会の孤独、スタイリッシュな空気感にはぴったりでしたね。

~ちなみにこのレコードは家にありました=昔音楽&昔鉄のネタに出来たのに~(笑)。


展覧会の作品に話を戻しましょうか・・

ホッパー以外の作家の作品の中で印象に残ったのはこれでした。新聞の報道画家だったジョン・スローンと言う人の<Six O'Clock, Winter >と題する1916年の作品。

NY3番街の高架鉄道のラッシュアワーを描き、賑わう街の一瞬を切り取っています。~鉄好き、アメリカ電車好きには印象に残りました。暮れきっていない空の色と、駅や街の明かりの対比がいいですね。人々の声や、高架を行く電車の音まで聞こえてきそうです~戦前の新聞や週刊誌の挿絵風で、画家のオリジンがわかる絵です。ホッパーと高架鉄道001R.jpg(10)

このブログは管理人の趣味で、しばしば脱線しますが、ここは鉄ブログらしく、絵のモデルとなったNYのThird Ave. Elの画像をお目にかけます。

戦前に高架鉄道が消えたNYの中心部、唯一マンハッタン3番街のものは結構遅くまで残っていたらしいです。鉄道雑誌はもちろん、ノスタルジックな都市生活を切り取った芸術写真の被写体にも、よく登場していました。nyEL01R.jpg(11)  絵にも描かれているオープンデッキの電車はこんな木造車。蒸気鉄道時代の客車を最小限の改造で電車化したので、デッキはそのまま、客室内の一角に運転室をつけたものです。このスタイルの電車はNYだけでなく、シカゴやボストンにも見られました。3RD AVE EL 02R.jpg(12) 庶民の生活に密着したこんな高架線。こうしてモノクロ写真で見るとなかなか味わい深い光景ですが、騒音と振動は相当なものだったようです。東京でもオリンピックの頃、高速道路を道や川の上に通してしまいましたが、急速な発展の過程では、どこの街も似たようなことをやるんですね。

NYでもブルックリンやブロンクス、クイーンズには結構残っていますが、高架鉄道沿い=住環境が悪い=家賃が安い、ということで、どこもあまり治安のよいエリアではありません。一度撮影に行って恐い目にあいました。


~などと、絵を見ながらも鉄心がくすぐられる展覧会でした。初期モダンアートの時代には、鉄道は近代生活のシンボルでしたから、画の題材にも頻繁に登場しますね~もっぱらノスタルジーの代表となってしまった現代とは大違いです。

新美術館室内R.jpg(13・14)それにしても、この建物はすごいですね。このご時世にバブリーな匂いを感じてしまうのは、貧乏人の僻みですか(笑)?新美術館.JPG


nice!(15)  コメント(18)  トラックバック(0) 

nice! 15

コメント 18

manamana

最近の静かな電車も乗り心地がよくていいのですが、
轟音をたてて走る電車、
野性的な魅力がありますね。
by manamana (2011-12-17 23:19) 

gop

ホッパー行かれましたか、線路脇の家は随分昔MoMAで見ました。
NYの高架沿いは雰囲気最高ですが、仰る通り治安は今イチですね。
ローウィのR40が似合っていました。
http://en.wikipedia.org/wiki/R40_(New_York_City_Subway_car)

by gop (2011-12-18 07:33) 

nd502

国立新美術館、入ってすぐに目につくのが巨大なコーヒー
カップです。(笑)
by nd502 (2011-12-18 08:37) 

Cedar

■manamana様
アメリカの電車も、最近は日本製が増えてしまい野性的な感じはなくなっていますね。乗り心地もずいぶん改善されているようです。
■gop様
ホッパーは私もMoMAやホイットニーで見て好きになりました。
R-40の情報ありがとうございます。ローウィ最大の失敗作(?)もついにリタイアしてしまったんですね。結構好きだったんですが
■nd502様
新美術館<建物自体も作品>とか言ってますが、コーヒーカップは確かに目立ちます。

by Cedar (2011-12-18 12:16) 

Cedar

★UZ様
★COLE様
★サットン様
★denta60様
★パルの大冒険様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2011-12-18 12:18) 

Junior

 
(^O^)/
http://img43.imageshack.us/img43/8440/avitarnighthawks.jpg

by Junior (2011-12-18 14:18) 

Cedar

■Junior様
OH! What a nice street running!

by Cedar (2011-12-18 14:34) 

メイジ

ご訪問 & nice! ありがとうございます。なかなかいい企画展でしたね。
ホッパー作品の現地に行かれた際の写真、なかなか興味深いです^^
by メイジ (2011-12-18 15:41) 

フタミ

「Nighthawks」は素敵ですね。
実際に、このような店内が丸見えのバー(軽食堂)があるのでしょうか。
by フタミ (2011-12-18 17:56) 

nexus6

そうでしたか... 絵画展はもう終わっちゃってたんですね...
小生、米国の鉄道黄金時代の写真集が大スキでありまして、特に街並みイッパイが写り込んでいる写真がお気に入りなのであります。  ホッパーさんの作品は、まさにそういった写真集の数コマの様でイイなぁ~

以前、結構真剣に1/150で'60年頃の雰囲気の米国の街並みジオラマを造ろう と意気込んだ時期があったのですが、やはりその時代の彼の土地の空気を吸ったことが無いというコトは表現上如何ともし難く、構想半ばで終わっちゃいました...
by nexus6 (2011-12-18 21:39) 

Cedar

■メイジ様
こちらこそありがとうございます。アメリカモダンアートは割りと興味があり、NYに行くと必ずMoMAやホイットニーやグッゲンハイムには足を運びます。東京でも美術館めぐりはたまに行きます
■フタミ様
ご訪問とコメントありがとうございます。Nighthawksのモデルは特に無いようですね。
■nexus6様
ホッパーの町並み、特に赤レンガや木造ペンキ塗りのアメリカンハウスは模型の参考にもなりそうです。
アメリカの町並みジオラマ、ネットなどの資料も充実した今からでも再チャレンジしてください。

by Cedar (2011-12-18 23:42) 

On2NGers

Nighthawks良いですね。
KALMBACH社のDETAILING TIPS AND TECHNIQUESと言う本のModeling a MoodにOゲージの模型が載ってます。
確か、この絵をテーマにした短編小説があったのですが、探しても見つかりませんでした。

by On2NGers (2011-12-19 09:04) 

Cedar

■On2NGers様
Nighthawksの情報ありがとうございます~
>KALMBACH社のDETAILING TIPS AND TECHNIQUESと言う本のModeling a MoodにOゲージの模型が~

そうでしたね!この本はうちにもあったはずなんで確認してみます。
短編小説の方は知りません。読みたいですね!
by Cedar (2011-12-19 20:20) 

Cedar

★hanamura様
★シュウチャン様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2011-12-19 20:22) 

京葉帝都

“Approaching a City”にはドキッとしました。大都会への入口は地下から、というケースが増えました。ニュージャージー州のニューアーク空港からタクシーに乗ってハドソン川のトンネルを潜ってマンハッタンの地上に出た時と同じような印象でした。
絵の中のトンネルと壁はコンクリートで当時は先進的だったのでしょう。
“Nighthawks”は明暗のコントラストも素敵ですね。
高架鉄道は鉄橋が連続しているようで確かにうるさそうです。
日本でも秋葉原、御徒町、有楽町、新橋、下北沢、京橋、鶴橋など、特長ある街の賑わいを電車が跨ぐシーンが見られて楽しいです。
by 京葉帝都 (2011-12-20 15:05) 

Cedar

■京葉帝都様
エドワードホッパーの作品は本当に良いです。映画的というか、ストーリーが感じられる絵画は彼ならではですね。
同じような意味で、都会の高架線にはストーリーが感じられます。
~なんだかよくわからないコメントですみません。
by Cedar (2011-12-20 23:22) 

Cedar

★gardenwalker様
★maipenrai様
★やまびこ3様
nice!ありがとうございます
by Cedar (2011-12-20 23:24) 

Cedar

★ひもブレーキ様
通算3000個目のNICE!ありがとうございます!!

by Cedar (2011-12-22 10:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。